Hunter river(ハンターリバー)
ワナカで知り合ったアメリカ人

     



Wanakaで知り合ったアメリカ人

Wanakaの町で電話ボックスから出たときのことだった、
突然人懐っこい白人が「釣りでしょ?」と聞いてきた。
私の帽子についたフライが見えたのか、
リュックにぶら下がった釣り道具を見つけたのか、
私が釣り好きだとわかって話し掛けてきた。
アメリカから彼女と一緒に釣りに来たという。

名前はアレックス25歳くらいだろうか、靴も履かずにラフな姿だった。
さっそく釣りの話が始まった。
電話ボックスの前に座り込んで地図を広げた。
アレックスが行った川を一通り話し終えると、「そっちはどうよ?」と聞いてきた。
ちょうどYoung Riverから帰ったときだったので、11ポンドのニジマスの話をした。
さらにOreti Riverの9ポンドのブラウンの話も教えてあげた。
かなり興奮気味で、さらに興奮して聞いてきた。

同じ釣り好きでも、いろいろなタイプの人がいるけど、
アレックスは、かなりの物好きなタイプで、
人が行かないような山奥の釣りが好きなこと、
見つけてから釣る楽しさを求めるところ、
自分で全てをこなしたいと思うわがままなところ、
かなりの点で私に近いものを感じた。
そんなこんなで話はさらに加速し盛り上がった。


あこがれのHunter Riverへ

アレックスはWanakaのそばに友人がいて、
しかもその友人はHunter Riverの地主らしい。
そしてアレックスはHunter Riverに釣りに行くという。
Hunter Riverといえば、日本でも紹介されているほど名高い川。
残念ながら頑丈な4WDかヘリコプターがないと上流には行けない。
歩くには遠すぎる。行きたいけどいけない・・・
近寄りがたい場所であるほど、行きたい気持ちも強かった。
そんなわけでHunter Riverへの釣りは完全にあきらめていた。
そんなときに、アレックスがHunter Riverに行くという。
話のはずみ、俺も連れて行ってくれと無理を言ってみた。
答えはやっぱり無理だった。
結局話はここまで、アレックスと別れた。

その4日ほど後だった、アレックスからメールが来た。
読んでビックリ。
Hunter Riverで16ポンドのブラウンと8ポンドのニジマスを釣ったと書いてあった。
なんてこった。Hunter Riverとはそれほどまですばらしい川なのか?
どんな川なんだ。気になる→行ってみたい→けど遠い。でも16ポンド。
あきらめていた川が一気に行かなくてはいけない川になってしまった。
5万分の1の地図をにらんでみると、鍵のかかったゲート(砂利道の終わり)から、
Hunter Riverまで20km。さらに川が安定する区間まで16km。
歩くには果てしなく遠い。
山を越えてのアクセスは2000m級の山がHunterの谷を囲み、
山を越えていくルートはない。

Wanakaの町でどうにかして楽な行き方がないかを尋ねるが、
ボートで川の入り口まで乗せてもらい歩くか、4WDで途中まで乗せてもらい歩くか、
ヘリコプターで一気に飛ぶか、どれもこれも金のかかる方法ばかり。
そんな贅沢するには若すぎ、お金も無い。
そして再び地図をにらんでみるけど、歩くしかない。
幸いHunter Riverには8kmほどおきに、Hutという無人の山小屋がある。
というわけで、テントが必要なく荷物も軽くなることだし、
たっぷり歩こうと決断。
02年1月28〜2月1日の4泊5日の行程でHunter Riverを目指すことにした。

    
  Hutには暖炉、薪、水道(雨水利用)、ベッドなどがある。とても快適
  Hutの利用はワナカのインフォメーションセンターで利用チケットを買う
  確か1泊4ドルくらいだった。

地主に許可をもらい、鍵のかかったゲートの脇に車を止め歩き始めた。
頭を超えるほどの背の高いリュックを背負い歩き始めた。
ひたすら4WDの道が伸びている。
「4WDさえあれば、こんなつらい思いをしないのに・・・」
「この世の中から4WDが消えてしまえばいいんだ!、そして私だけが持つ。
そうすりゃ山奥は独り占めだ。」
そんなどうしょもないことを考えても、ひたすら歩くしかない。

強い日差し汗が流れる。
3〜4時間も歩くと道はさらに荒くなる。
うちらの直ぐ横をヘリコプターが飛んでゆく。上流に釣りに入るのだろうか?
「ヘリコプターなんてこの世の中になければいいのに、そして私だけが持つ。」
ひたすら歩く。5時間歩いてようやくBoundary Hutに到着。
ぐったりと疲れて1日を終えた。
Boundary Hut周のhunter riverはてしなく広い河原に、
川はいくすじに分かれて流れている。
広い川でつかみどころがないようだけど、
分岐した小さな流れでブラウンの姿を見つけることができた。

Boundary Hutから2時間歩いたところでようやく川が一本にまとまり、
ここからFerguson Hutを目指し釣りあがることにした。


           Hunterの谷


あこがれのHunter Riverの釣りはというと、これがいまいち。
高い山が並び、奥には氷河まで見える。水は青く澄み、魚を簡単に見つけることができる。
谷をうめる草原には多くのゼミが鳴き、セミフライ1つで十分な釣りだった。
ここまでは最高のロケーションだった。
それなのに釣れてくる魚のコンディションが良くなかった。
釣れるのはブラウンとニジマスで、アベレージは50〜60p。
だけどどれも痩せていて、ひ弱な魚ばかり。
餌が少ないのか、湖のせいなのか、どういうわけだかヒョロヒョロだった。
Ferguson Hutで一泊し、次の日もさらに上流のForbes Hutまで釣ったが、
やっぱりコンディションに不満が残るものばかりだった。2日間で合計8尾ほど釣った。
空は青く、風のないいい一日に、うまいビールが飲めた。

       
       この魚を釣るには大金を出すか、2日間歩くか


ニュージーランドのネイティブフィッシュ

Ferguson Hutでもう一泊し後はひたすら帰るのみ。
途中疲れて、小川で休んでいると、小魚がたくさんいるのを発見。
5pほどの魚が干上がりつつある川に群れている。
ブラウンの稚魚のようだけど違う。カジカのようにも見えるけど、たまにライズする。
すくい上げてみると、見たことない魚。
ドジョウとマスをかけ合わせたような姿をしている。
そして水から上げると石の上をヒレを使って歩いて水に戻る。
そんな不思議な小魚と時間を忘れて遊んでいると、車の走ってくる音が聞こえていた。

見ると凸凹道に大きく揺さぶられながら4WDが、
こっちに向かってきてうちらの前で止まった。
うちらはこんなあれた道を車がここまで来れることに驚き、
車の人は、こんな山奥に歩いている(小魚と遊んでいる)うちらに驚いていた。
ラッキーなことに乗せていってくれると言う。
親指も立てずにヒッチハイク成功。
もう1泊して車まで歩く予定だったのに、一気に車まで帰れる事になった。
やっぱり4WD最高!

道はひどくラフで、何度も石に車をぶつけ、川を渡り、
そんなワイルドな運転にもビックリした。
日本車なのに日本でここまで酷使している日本人は見たことがない。
車の運転手は「日本人は車を大事に乗ってくれるから、
いい中古車がニュージーに入ってくる。そしてニュージーで廃車になる」と言っていた。
なかなか世界はうまくできている。
一気にわれらのミツビシギャランにたどり着いた。

   
     大切に扱われてきた日本車は、NZで酷使される

その後アメリカ人のアレックスからは連絡をとってなく、
Hunter Riverからもどって約半月ほど後、アレックスからメールが来た。
メールにはこう書かれてあった。
「ハッハッハッ・・・、16ポンドはジョークだよ。
お前の兄貴が11ポンドのニジマスを釣ったことがうらやましくて、
ちょっとウソをついてやった。」
そしてそんなからかいの文章の後に丁寧にHunter Riverへの行き方や、
いい区間のことが細かく書かれてあった。
アメリカ人め二度と信用するもんか・・・

02年2月20日 
Claremce Riverより


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